「とにかく、発売日が待ち遠しいんです。もう勝手に出しちゃおうかなって思うくらい(笑)、早くみんなに聴いてほしくて」
出来上がったばかりのアルバム「PROUD」を前に、Ms.OOJAはそう言いながら気持ち良く笑った。もちろん自信作に仕上がっているからに違いないが、きっと、心から納得できるものが作れたのだろう。喜びに満ちた充実感が、心地よいテンションで伝わってきた。
2017年。彼女は「Ms. OOJAの、いちばん泣けるドリカム」という作品をリリースした。歌手を目指すきっかけとなったDREAMS COME TRUEの曲だけで構成された、しかも、吉田美和・中村正人公認の史上初のリスペクト・カバーアルバム。当初は「プリプロから震えるほど緊張した」と語っていたが、最終的には歌い手として、表現者として、自他共に認めるほどの大きな成長に繋がっていった。そのアルバムを引っさげて行われた、ビルボードライブ東京でのプレミアムライブは今でも忘れられない。カバーとかオリジナルとか、そんな括りを超越したところで彼女は「歌」を歌っていた。
「前は、歌うことがちょっとしんどかったんです。当たり前かもしれないけど、ピッチだとかリズムだとか歌詞だとか、いろんなことを気にして考えながら歌ってたから。だけどこの1年を通して、ちょっと楽になったんですよ。そういうことも大事だけど、その前に、私が楽しんでないと伝わるものも伝わらない。もっと自由に楽しく歌うっていうことが、ライブを見てくれてる人にとっても大事なのかなって思えるようになったんです」
ニューアルバム「PROUD」は、そんなMs.OOJAの心の変化を存分に反映させたアルバムだ。これまでは、どちらかというと切ないバラードを極上のボーカルで歌い上げるイメージが強かったと思うが、今作ではライブのオーディエンスを巻き込むようなアレンジ/ビート感のナンバーが格段に増えている。<立ち上がってEverybody 声を出して Let’s stand up!!>と歌われる「STAND UP!!」は、Ms.OOJAのレパートリーの中で最もコミュニケーション指数の高い曲になった。
「前作「AGAIN」に収録されている「I’m ALIVE」という曲は、こんなにアップな曲を私が歌って大丈夫かな、お客さんビックリしないかなって、すごく悩みながら作ったんです。だけど蓋を開けてみたら、みんなめちゃくちゃ好きだって言ってくれた。こうじゃなきゃいけないとか、こうあるべきって勝手に自分で自分をがんじがらめにしてたけど、すごく解放されて気持ちが楽になったんですよね。その時のツアーが本当に楽しかったこともあって、今回のアルバムは自然とライブを意識して作り始めました。「STAND UP!!」はかなり思い切った1曲だけど、みんなと一緒に声を出した時に見える景色がすごく楽しみなんです」
また今作では、「自分を解放できたからこそ思い切って言えたこともたくさんあった」という歌詞にもぜひ注目してみてほしい。共作で書かれたものも多いが、ドラマチックなストーリーの中で生きる「誰か」を演じるのではなく、「私は」こう思ってる、「私は」こんな風に生きている、そうやって素直に綴られた言葉で歌われる曲がこれまで以上に多いと気付くはずだ。日常の景色を等身大の目線で切り取った「sakura」にも、自分らしく生きることについて考えさせられる「Be myself」にも、ちゃんと彼女の生き方がにじみ出ている。「ステージに立つ自分がこんなこと言ってもいいのかな?」以前の彼女だったらブレーキを踏んでいたようなことも、胸を張って言葉にできたそうだ。
「今まで、自分のことって二の次だったんですよ。聴いてくれる人がどう思うか、どんな曲を聴きたいのか、そればかり考えてた。でも今回はそうやって自分を縛り付けることなく、心から楽しみながら、そしてもっと自由に、「私が」好きなものを詰め込もうって思えたんです。そういう自由さも受け入れて、私の歌を聴いてくれる人がいるんだと気付けたから。自分がやりたいことだけやって「私は歌手です」って言いたいのならそうすればいいと思うけど、私は、聴いてくれてる人も含めてアーティストだと思っている。そういうみんなのことを誇らしく思う気持ちが、この「PROUD」という言葉になったんです」
Ms.OOJAの声の魅力を存分に生かした冬のバラード「White Letter」で幕を開ける本作。頑張れだけではなく、自分自身をさらけ出すことでエールを送る彼女なりの応援ソングが続き、盟友JAY’EDを招いての「朝陽のようなkissをして feat.JAY’ED」、LAで制作した「I won’t forget about you」、ドラマチックな歌謡曲テイストがMs.OOJAらしい「コントラスト」など、振り幅の広いラブソングで魅了する。心の奥底にある思いをダイレクトに歌い上げた後半の楽曲のエネルギーは圧巻だ。Ms.OOJAの<現在>をきちんと捉えたこのアルバム本編はもちろん、ファンの声によって構成されたANOTHER BEST「PROUD SONGS」、彼女の意識を大きく変えるきっかけとなった前作「AGAIN」のツアーファイナルを収めたDVDがセットになった5,000枚限定生産盤もぜひ併せてチェックしてみてほしい。
「基本はスロースターターで、自分からガシガシ歩いていくというよりは、与えられたものをひとつずつ消化していくタイプの人間。持って生まれた性分はなかなか変わらないけど(笑)、それでもこうやって振り返ると、ゆっくりでも着実に歩を進めてきたなって感覚がありました。悩んだり、苦しんだり、迷ったりしていても、フッと抜ける瞬間はきっとある。生き辛いなと思っている人、それを言葉に出来ない人がこのアルバムを聴いて、少しでも生きることが楽になってくれたら嬉しいなと思っています」
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