Ms.OOJA COVER ALBUM 「流しのOOJA~VINTAGE SONG COVERS~」

New Release

2017年に発売された「Ms.OOJAの、いちばん泣けるドリカム」以来3年ぶりとなるカバーアルバムは、Ms.OOJAが敬愛する昭和歌謡の色褪せない名曲の数々を艶やかに歌い上げた、彼女の真骨頂とも言える珠玉の1枚。

【通常盤(CD)】¥3,000(税抜)UMCK-1664

01. フライディ・チャイナタウン
/ (原曲:泰葉)
02. 真夜中のドア/Stay With Me
/ (原曲:松原みき)
03. 異邦人
/ (原曲:久保田早紀)
04. 夏をあきらめて
/ (原曲:サザンオールスターズ)
05. ごめんね…
/ (原曲:高橋真梨子)
06. Woman~Wの悲劇より~
/ (原曲:薬師丸ひろ子)
07. つぐない
/ (原曲:テレサ・テン)
08. さよならの向う側
/ (原曲:山口百恵)
09. 想い出のスクリーン
/ (原曲:八神純子)
10. 難破船
/ (原曲:加藤登紀子)
11.
/ (原曲:中森明菜)
12. シルエット・ロマンス
/ (原曲:大橋純子)2013年発売のMs.OOJA「30」に収録

MOVIE

liner notes

「流しのOOJA〜VINTAGE SONG COVERS〜」

店の扉がガラリと開いて、スーツ姿の男性がギターを抱えて現れる。「1曲、いかがですか」。ほろ酔いの客が口にする歌のタイトルは、懐かしい演歌のヒット曲だったり、一世を風靡した歌謡曲だったりと様々だ。弾き語るその歌声にじっと耳を傾ける人、興に乗って自慢の喉を披露し始める人、知らない者同士が声を合わせて歌うことも珍しくない。程良きところでお代を頂戴し、次の店へーー。そんな風に夜の酒場を練り歩いてきた”流し”の粋な姿は、昭和の半ば頃までだろうか、あちこちの歓楽街で目にすることが出来たそうだ。

時は流れて令和2年。これまで数々の名曲を歌ってきたMs.OOJAが、約3年ぶりにカバーアルバムを出すという。タイトルは「流しのOOJA〜VINTAGE SONG COVERS〜」。SNSでも少しだけお披露目されていたが、昨年から彼女が”流しのOOJA”としてゲリラ的にバーで歌ってきた、あのサプライズ・パフォーマンスに着想を得て作られたアルバムだ。

「ラジオのレギュラー番組があるから定期的に札幌に行くんですが、とあるミュージックバーで、歌謡曲のレコードを聴きながらお酒を飲むのにハマって。もともと好きな曲もたくさんあったけど、こんなにかっこいい曲があるんだ!って発見も多いから、楽しくて全然帰れない(笑)。そのうち聴いているだけじゃ物足りなくなり、その店で歌わせてもらうようになったんです。地元のピアニストと2人で、文字通りのぶっつけ本番。いつも突然行って突然歌うんだけど、それが本当に楽しくて」

ふらりと現れるようになった“流しのOOJA”は、松原みきのデビュー曲「真夜中のドア/Stay With Me」(1979年)や、のちに研ナオコもカバーしたサザンオールスターズの「夏をあきらめて」(1982年)、高橋真梨子の「ごめんね…」(1996年)、八神純子の「想い出のスクリーン」(1979年)、泰葉のデビュー曲「フライディ・チャイナタウン」(1981年)、映画も大ヒットした薬師丸ひろ子の「Woman“Wの悲劇”より」(1984年)、久保田早紀の「異邦人」(1979年)など、今作でも核となっている曲を歌ってきたそうだ。

「きっかけになったのは、「想い出のスクリーン」。最初に聴いた時、ハッとしたんですよ。記憶にないというか、たぶんDNAのレベルで刷り込まれていたんだろうなって思うくらい、私、自然と歌えていたんですよ。たしかに母親の影響で歌謡曲はよく耳にしていたけど、あの時のあの感覚は自分でも衝撃的で。これが原点なんだって思ったんです。思い返せばNHKの「新・BS日本のうた」に初めて出演した時、それまで知らなかった「真夜中のドア/Stay With Me」を歌ってすごくしっくりきたのも、年齢を重ねるたびにどんどん歌謡曲が好きになっていくのも、そういうことだったのかと」

腑に落ちた彼女は自分の中にあった歌謡曲の扉を全開にし、“流しのOOJA”を心ゆくまで楽しんだ。札幌から次の街へと思いを馳せていた矢先に新型コロナウイルスの影響を受け中断してしまったが、そこで感じた喜びや興奮は、いつかやってみたいと思っていたこの歌謡カバーアルバムへと昇華させた。前出のレパートリーに加え、ファンのリクエストに応える形で選曲された12曲。イントロを聴いただけでその曲の世界に引き込まれ、思わず一緒に歌いたくなってしまう珠玉のメロディーに酔いしれる。いわゆる昭和歌謡的なものだけでなく、洋楽の要素を意識したニューミュージックとのバランスにもグッとくる仕上がりだ。こんな歌が聴こえてきたら、いつものお酒が何倍も美味しく感じられるに違いない。

「たしかに音楽とお酒は切っても切れない関係だなと思うし、私もそういう時間を楽しんでいるけど、最近ちょっと自分の中の変化みたいなものにも気づいたんですよ。こういう曲を聴くと、染みるお年頃になってきたんだなって(笑)。若い頃は演歌や歌謡曲って昔の人が聴くものだと思っていけど、そうじゃなくて、これはもう人間の本能なんだなと思えたんです。歳を重ねていく中で、郷愁とか哀愁というものを求めていく人間の性として、演歌や歌謡曲っていうカテゴライズの音楽がだんだん染みるようになる。そう考えると、これってまさに今の私だから出来たカバーアルバムなんですよね。レコーディングをしながら今の私の声にもすごく合っていると思ったし、どの曲も歌っていてすごく楽しかった。カバーアルバムの行き着く先は歌謡曲のカバーアルバムだと思ってきたんですが、今作でちゃんと、そこまで行き着くことが出来たかなと思っています」

流しという、おそらく誰も予想しなかった粋な切り口で自身のルーツを具現化したMs.OOJAのカバーアルバム。ジャケット写真に使われているのは、Ms.OOJA自身がオファーした日本画家の加藤美紀が描き下ろした、化粧品メーカー「ノエビア」のCMを彷彿とさせるような彼女の肖像画だが、品の良い色気をまとった流し目からも、この作品が醸し出すムードが伝わってくるはずだ。

「最近はまた昭和歌謡がブームになっているみたいだけど、年代やジャンルに関係なく、聴きたい音楽が自由に選べる時代になったからこそ歌謡曲の良さも見直されているんだろうなと思っていて。私がミュージックバーでいろんなレコードを聴きながらジャケットを眺めてワクワクしたように、このアルバムを手にしてくれた人にも、知らなかった名曲に出会えた時のあの興奮をぜひ味わってほしいなという思いも込めました。私にとって、カバーはもう6枚目。その辺の若造には出来ない(笑)、今の私だから、そして6枚目だから作れたカバーアルバムだと思っています」

Text by Kuniko Yamada