INTERVIEW

2020年、秋。
Ms.OOJAが久しぶりにオーディエンスの前で歌った。
「Ms.OOJA “Birthday” LIVE TOUR 2020」と名付けられた、3ヶ所6公演のステージ。
彼女の誕生日を共にお祝いし、夏にリリースされた「流しのOOJA〜VINTAGE SONG COVERS〜」の楽曲もたっぷり楽しんだ。コロナ禍でお預けになっていたが、Ms.OOJAの歌声を、そして音楽そのものを、生で聴くのはやっぱり格別だ。
大袈裟かもしれないが、自分にとっての”エンターテイメント”の世界が息を吹き返したと言っても過言ではないほどの感動をくれた、忘れられない夜になった。

そのライブの最後に、当時まだ未完成だった新曲が発表された。
夢、奇跡、運命、明日、希望、覚悟…。エネルギーに満ち溢れたワードが真っ直ぐ心に届き、自然と胸を張りたくなるようなポジティブな空気が会場を包んでいった。
今、こんな時代だからこそ必要な思いや言葉が詰まった曲だと素直に思えた。
「コロナ禍でライブが出来ない、ファンのみんなに会えないという状況になり、改めて自分が歌を歌う意味や繋がりの大切さについて考えたんです。
歌手としての活動も10年目。一度原点に戻るというか、リセットされたような感覚の中で”歌”と向き合ったら、本能的にこの曲を歌いたいと思ったんですよね」

未完成でも今伝えたいという彼女のリアルな思いが詰まっていたその曲こそが、10年目のデビュー記念日となる2月16日に配信がスタートした「はじまりの時」。
アレンジの印象としてはとてもシンプルなのに、Ms.OOJAのボーカルが聴こえてくると、まるでフルオーケストラと共に歌っているような壮大さが生まれるからもう、圧巻としか言いようがない。

もともとこの曲は、サッカーのワールドカップをテレビで観戦し、それまで味わったことがないほどの感動をくれた日本代表の選手達へ感謝の気持ちを込めた曲を作りたいと思ったのがきっかけだったそうだ。そこからすぐに、これまでも数々の名曲を共に手掛けてきたプロデューサー・Ryosuke“Dr.R”Sakaiと、最近では瑛人の「香水」を手掛けたことでも知られる盟友のシンガーソングライター・ルンヒャンと3人でコライト。
世界がこんな状況に陥るとは誰も予想していなかった、2018年のことだ。

「タイミングだったんだろうなと思いました。発表する機会もなかったし、3年も未完成のままだったのは”こういうこと”だったのかなって。
あのライブではフェイクっぽく歌いましたけど、未完成だったブリッジの部分には、ツアーで感じたこと、ライブをしながら自分の中で生まれた言葉を入れたんです。
それが<逃げない 迷わない 言い訳も後悔もしない>。
コロナ禍で改めて感じたこと、10周年を迎えてここからという気持ち、そしてこのツアー中に起こった奇跡と自分の中の大きな覚悟が、この曲を完成させたんですよね」

ツアー真っ最中に迎えた誕生日当日、Ms.OOJA初の日本武道館公演が決まった。名古屋公演の2部が始まろうかというその時に迫られた「やるか、やらないか」の問いに迷いはなく、その奇跡に運命的なものを感じた彼女は即決をしたそうだ。

「武道館は目標だって言ってきたから嬉しかったけど、その一方で、自分で自分に言い訳をしながらずっと逃げてきたようなところがあって。
早い段階で達成してしまう人もいるけれど、私はそうじゃなかった。
これまで出来ることを自分のペースでコツコツ積み上げていくような、ある意味“勝負をしない人生”を生きてきたから、怖かったんですよね。勇気がなかった。
でも、国を背負って勝負に挑む日本代表の選手達の姿に心を動かされたように、自分も全力で目標に向かっていこう。
やれるかな?じゃなくて、やってやるんだ!って、腹を括ったんです。<覚悟決めれば それが はじまりの時>。
まさに今の自分のことを歌っていたんだなって、この曲の意味合いがますます深くなりました」

10周年を迎え、初めての日本武道館で歌うことを予知していたかのように呼吸を始めた「はじまりの時」。
MVの撮影現場では、こんな偶然もあったそうだ。

「今回撮影をしたのが、10年前に「ジレンマ〜I'm your side〜」のMVを撮ったスタジオだったんです。
10年ぶりに来て、10年分の自分の映像を投影しながら歌うのは、すごく不思議な感覚でしたね。
自分のことなんだけど、どこか他人のことみたいに感じるところもあって。
いい意味で、過去は過去だし今は今。でも、その時その時の今をちゃんと積み上げてきたから、私は今ここにいるんだということも実感しました。音楽に関しては常に全力投球だから、そうやって生きてきたことをすごく誇らしく思うし、過去の自分にも、周りにも感謝です。
まだまだ10年だけど、やっぱり10年ってすごいなって思いましたね」

2022年3月27日。
Ms.OOJAは10年分の思いを胸に、日本武道館のステージに立つ。

「コロナ禍で始めたファンクラブの企画で、それぞれの人生の中に私の歌があって、支えになったり、励みになったりしながら一緒に歩いてきたんだなというエピソードをたくさん読ませてもらいました。いつもは2時間以上ライブはやらないって決めているんだけど、私こそいつもみんなに支えられていますからね。
たくさんのおじゃファミに囲まれて、10年分の楽曲から厳選して、一体何時間ライブやればいいんだろう(笑)。終わったら燃え尽きているかもしれないけど(笑)、そうなってもいいっていうくらいの勢いで挑もうと思っています。覚悟を決めて開けた扉の向こうに、
きっとまた次の何かが見えているはずだから」

TEXT BY KUNIKO YAMADA